ご冗談でしょう、むとうさん

自称「この世界ってどうなってるのかな学」をやってるひとが書いてるブログ。一応ベースは経済系。書評チックなものからただの雑感まで、本の話題を中心につれづれなるままに書き散らす予定。最近は思考メモが中心。「記事は全て個人の見解」らしいです。

3月の読書メーターまとめ

2月は過去稀に見る少なさだったけど、さすがに今月は標準程度に復活。新書文庫率の高さはもしかしたら過去稀に見るレベルかもしれない。1冊あたりページ数も350オーバーだけど、『リビング・ヒストリー』と『驚異の百科事典男』が引っ張っている感は否めない。どっちも面白かった。

 

今月のベストなんだけども、やはりトップに据えるとなると『リビング・ヒストリー』だろうか。私はこの世代で活躍した女性の自伝・伝記が大好きなのだ。自分の力で道を開いていくという気概が感じられて、元気が出る。

 

次点は『桃太郎はニートだった!』『中国共産党の経済政策』『太陽系はここまでわかった』『驚異の百科事典男』『聖書考古学』…今月は次点クラスが大量で、割とよい月でしたね。(まぁ今月の新刊は一冊もないんだけども!)

 

2013年3月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4572ページ
ナイス数:65ナイス

朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機感想
橋の崩壊、堤防の決壊、市役所の崩壊…といきなり衝撃的な書き出しで始まる本。笹子トンネルの事故を受けて書かれた…本ではなく、2011年の出版。その辺の先見の明は素晴らしい。民間企業の会計基準なら当然存在する「減価償却」の概念がどっかに行ってしまっていることが一つの大きな原因なんだろうね。開発した計算ソフトの宣伝色は割と強いか。解決策として市民みんなでコスト意識を持って話し合ってーみたいなのは確かに有効なんだろうけど、それがやりにくい(できない)のが公共財の公共財たる所以なわけで、その辺はちょっと短絡的かな。
読了日:3月2日 著者:根本 祐二
リビング・ヒストリー ヒラリー・ロダム・クリントン自伝リビング・ヒストリー ヒラリー・ロダム・クリントン自伝感想
私は女性政治家、特にこの年齢層の人たちの自伝が好きだ。基本的に女性の社会進出がまだそれほどいい顔をされなかった時代なので、いかに自分の力で道を切り開いてきたかがよくわかる。以前読んだサッチャー自伝もとても面白かった。それと比べると基本的にファーストレディとしての時間が長いため、政治の第一線でという形にはなれないのが残念。ホワイトハウスの裏話とか面白いところもたくさんあるし、女性の権利向上に関するエピソードは興味深かったが。ビルの退任で終わっているので、国務長官ヒラリーとしての部分がそのうち出るかな?
読了日:3月3日 著者:ヒラリー・ロダム・クリントン
科学と人間の不協和音 (角川oneテーマ21)科学と人間の不協和音 (角川oneテーマ21)感想
疑似科学入門』の予防原則振りかざし姿勢には閉口していたが、それが原発事故でふっきれてしまったらしい本。頑張って「中立的」に書こうとはしているようだが、原発事故の下りや清く貧しく云々など、著者の裏に見える主張が見え隠れ。問題は著者が「科学者」であること。自分の書いてきた「科学者」批判にご自身の研究生活は耐えられるのか?この辺を振り返った記述がもっとあれば印象も違ったんだろうけども。結局は「科学」ではなく「科学者」の問題、もっと言えば政治や経済の問題に帰着するんで、科学者はもっと科学で遊んでてください。
読了日:3月6日 著者:池内 了
中国共産党の経済政策 (講談社現代新書)中国共産党の経済政策 (講談社現代新書)感想
習近平時代に突入することを踏まえて、中国はこれからどこへ向かうのか。タイトルがミソで、「中国共産党の」経済政策なのだ。決して「中華人民共和国(中国)の」経済政策ではないということ。共産党内のポスト争いや人脈といった概念をきちんと理解しないといけなくて、その辺をしっかりと最初に書いているのはありがたい。基本的に今後の中国についてはやや楽観的かなという印象。ソ連(社会主義)の二の舞にならなければいいけれど。全体として新発見の詰まった本というわけではないが、問題点の整理などですっきりした良書だろう。
読了日:3月8日 著者:柴田 聡,長谷川 貴弘
日本の七大思想家 丸山眞男/吉本隆明/時枝誠記/大森荘蔵/小林秀雄/和辻哲郎/福澤諭吉 (幻冬舎新書)日本の七大思想家 丸山眞男/吉本隆明/時枝誠記/大森荘蔵/小林秀雄/和辻哲郎/福澤諭吉 (幻冬舎新書)感想
誰もが名前を知っている(※1人除く)思想家7人の思想を、500ページ近いとはいえ新書1冊で読み解こうというなかなか無茶な試み。ベースのテーマが「西洋をどう乗り越えるか」を敗戦とパラレルに見ていく…途中で西部だの中野剛志だの佐伯だの出てくるので、ああそういうことかという感じ(苦笑)日本人論としての思想を見るならともかく、言語論や倫理学といった普遍的なものが求められるあたりで「西洋を乗り越えた日本!」みたいなことやってもしょうがないと思うんだけど。興味を持てたという意味ではとっかかりに良い…のか??
読了日:3月9日 著者:小浜 逸郎
僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか 絶望から抜け出す「ポジ出し」の思想 (幻冬舎新書)僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか 絶望から抜け出す「ポジ出し」の思想 (幻冬舎新書)感想
シノドス編集長による評論論…とでも言えばいいのかな?最後に宣伝が載ってて苦笑い。「頭でっかち」と「心でっかち」、アプローチは人へか物へかなど、キャッチフレーズはとても面白く頭に残る。それ以外の部分でものすごく真新しいことはないかもしれないけれど、言う=ダメ出しだけで実行されないことに問題があるということ。シノドスの背後にある思想が垣間見える。実行しようとしているからこその言葉の重みかな。経済状況に関する部分はちょっと蛇足感があるけれど、現状分析には欠かせないか。社会保障と消費税の部分は若干アヤシゲ。
読了日:3月12日 著者:荻上 チキ
桃太郎はニートだった! 日本昔話は人生の大ヒント (講談社プラスアルファ新書)桃太郎はニートだった! 日本昔話は人生の大ヒント (講談社プラスアルファ新書)感想
タイトルが若干アレだが、中身は至極まっとうな、童話(昔話)を通じた比較文化論。「人生の大ヒント」という感じもあまりなくて、良い意味でタイトル詐欺かもしれない。現在一つの昔話として語られているものが実は2つの別の要素の組み合わせではないか、という議論はなかなか面白い。また「正直おじいさんと隣の強欲おじいさん」という構図が韓国では兄弟というのも興味深い。グローバル化の中で、こういう物語に共通要素を見つけていければ、全世界の人たちが共感できる新たな文化が生まれるのかも…まで言うと深読みしすぎかな。
読了日:3月13日 著者:石井 正己
長宗我部 (文春文庫)長宗我部 (文春文庫)感想
戦国好きなら一度は聞いたことのあるあの家の末裔がご先祖について書く、という面白い試み。秦氏、始皇帝まで遡れるとかホントかいなと思ったが、宮内庁が通してしまうのだから意外とちゃんと証拠があるんだろう(失礼)元親、盛親の時代は戦国ネタで出てくるので、やはり面白いのはその前と、その後。山内政権下での旧長宗我部家臣、特に島姓になってまで仕えた一族の話は初めて知ったかな。それが明治維新につながるのもスケールが大きくていいね。あといくら代々使った字だからといって「親(ちかし)」という名前はどうかと思う笑。
読了日:3月16日 著者:長宗我部 友親
現代中国の政治――「開発独裁」とそのゆくえ (岩波新書)現代中国の政治――「開発独裁」とそのゆくえ (岩波新書)感想
中国も新体制になったわけで。著者は中国生まれ→日本に留学&日本在住ということで、「昔と比べればよくなったんだよねぇ」というスタンスな印象。結局はどんな状況もそれ相応の理由があるわけで、現状の中国に対して「民主化しない中国がイカン」とか「中国人民は抑圧されて可哀そう」という議論では始まらないということ。中国経済が破綻するとかもっと伸びるとかいろんな議論はあるけれど、政治との関わりも無視できない。多民族が自治区を持っていたり、農村と都市部が同じ国とは思えない状況では「民主化」は難しそうである。
読了日:3月18日 著者:唐 亮
太陽系はここまでわかった (文春文庫)太陽系はここまでわかった (文春文庫)感想
宇宙の話はダークエネルギーとか宇宙誕生云々が流行ってるけど、よくいえば身近…悪く言えば地味である太陽系探査の話。宇宙論が物理系なら、太陽系探査は生物系と結びついているのかな。基本的に生命探査、生命の起源を知るためにという意味合いを強く感じる。ソ連対アメリカの宇宙探索競争は面白い。プロジェクト規模が大きいから、単純に「知りたい」だけではなかなか通らないのだね。過去様々な人が、シンプルな望遠鏡だけで大きな発見をしていたことにも驚かされる。アポロ陰謀論に対する著者の憤りには大きな共感を覚えた。
読了日:3月21日 著者:リチャード コーフィールド
江戸の卵は1個400円! モノの値段で知る江戸の暮らし (光文社新書)江戸の卵は1個400円! モノの値段で知る江戸の暮らし (光文社新書)感想
江戸時代の物価から庶民がどんな生活をしていたかを探るという本。1文=20円という前提で話が進んでいくが、その根拠が「二八蕎麦が16文=320円だから」というちょっと曖昧なもの(それ以外にもあるらしいが)で、この辺の検証はもう少しきちんとしてほしかったかな。内容としてはトリビア本として十分楽しめる。町の関所(木戸番)がコンビニ化していた、蝋燭の使い残しすらリサイクル、とにかく見栄を張りまくる江戸っ子たち、などなど。特にいろんな物売りが出てくるのが面白い。通信販売の元祖…と言ってしまうと大げさか?
読了日:3月24日 著者:丸田勲
驚異の百科事典男 世界一頭のいい人間になる!驚異の百科事典男 世界一頭のいい人間になる!感想
百科事典ばりの厚さを持つ?百科事典読書日記とでも言おうか。著者が印象に残ったトピックについてコメントをしているのだけれど、エスプリが効いていてとても面白い。ブリタニカに載るためにはどうすればいいか、など真面目に条件を挙げていたり。単純な読書日記だけでなく、クイズ番組に出たりIQテストを受けたり…著者の行動力の高さを物語っているし、ある種の「頭の良さ」の一面を表しているのかな。一番印象に残った項目は「;」を古代ギリシャでは疑問符として使っていたらしいという話。本当かな;←こんな感じで使ってたらしいですよ。
読了日:3月29日 著者:A・J・ジェイコブズ
聖書考古学 - 遺跡が語る史実 (中公新書)聖書考古学 - 遺跡が語る史実 (中公新書)感想
聖書の記述を歴史的に捉えるとどうなるか?ノアの箱舟の洪水が云々という話を聞いたことがあったが、もっと考古学チックな。やはり聖書の性質上批判も多いのか、考古学的な見方に対する「言い訳」に多めにページが割かれている印象。古事記の扱いと並べて捉えるのは各方面から賛否両論きそうだ。記述に出てくる装備が明らかに時代錯誤だから後世のもの、という見方は面白い。大河ドラマとか遠い未来はそんな扱いかも。反動で聖書の記述を軽めに見るのが現代の主流であることを嘆くような記述もあった。この悩みは全学問共通なんだろうな。
読了日:3月31日 著者:長谷川 修一

読書メーター