ご冗談でしょう、むとうさん

自称「この世界ってどうなってるのかな学」をやってるひとが書いてるブログ。一応ベースは経済系。書評チックなものからただの雑感まで、本の話題を中心につれづれなるままに書き散らす予定。最近は思考メモが中心。「記事は全て個人の見解」らしいです。

1月の読書メーターまとめ

さて恒例の先月のまとめです。

 

冊数14冊はまぁ標準、やや多め?新書が多かったかなという感じ。実際ページ数は先月より微減の4340ページ。大体1日140ページ強ということで、1時間弱程度読書に費やしている計算かな。ものにもよるけれど。

 

ナイス数は55ナイス。おそらく『面白い本』が8ナイスで無駄に(失礼)引っ張っている感じ。意外と『入門朱子学陽明学』が伸びていた。

 

今月のベストはうーん、突出した1冊がなかった代わりにピンポイントなツボを突いてくる本が多かった印象で、1冊になかなか決めづらい。

 

候補としては『ハチはなぜ大量死したのか』『卑弥呼は何を食べていたか』『図解・超高層ビルの仕組み』あたりかな。あえて1冊、と選ぶなら『卑弥呼は何を食べていたか』を推したい。詐欺感満載のタイトルながら、最後まで楽しめたという意味で。笑。

 

『ハチはなぜ~』は確かに面白かったけれど、解説の福岡伸一で若干萎えたのが減点要因。この人はそろそろ動的平衡という言葉を使うのをやめてみたらどうだろう?

 

2013年1月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4340ページ
ナイス数:55ナイス

脱デフレの歴史分析―「政策レジーム」転換でたどる近代日本脱デフレの歴史分析―「政策レジーム」転換でたどる近代日本感想
新年一発目。近年の日本のデフレと昭和恐慌期を比較して論じる本は数多くあるけれど、この本の特徴は「レジーム」と背後にある思想に着目して論じたところにある。大国思想で金本位制に拘泥したこと、松方財政の本質を見誤っていたこと、金融面に対する蔑視など様々な要素が井上財政に繋がったとする。一般的な経済モデルでは背後の社会思想は重要視されない傾向にある(と思う)が、そういう意味でも経済史の面白さが詰まっている本。金融政策のレジームシフトは正に今起きているのかもしれないと考えると、今後を考える上で参考すべき点は多いか。
読了日:1月1日 著者:安達 誠司
ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫)ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫)感想
21世紀版『沈黙の春』といったところか。著者も意識しているのか、最終章が「実りなき秋」という名前だったり。書いてあることはハチの大量死。それがウィルスに加え抗生剤、農薬、無理な移動など人為的な原因でも起きていること。自然のシステムを回復させて云々。まぁどっかで聞いた話だけども、構成が上手いのかグイグイ読める。しかしアメリカの農業は規模が違うね。その大規模性がこの問題の遠因とも言えるけど。環境問題云々でなく、単純にハチの生態を知る、蜂蜜を食べたくなる、くらいの気持ちで読んだ方が楽しめるかもしれない。
読了日:1月3日 著者:ローワン ジェイコブセン,福岡 伸一
卑弥呼は何を食べていたか (新潮新書)卑弥呼は何を食べていたか (新潮新書)感想
古今東西「食」は人の心を惹きつけて止まない。飛鳥時代から天皇は氷割酒を飲んでいた、干し飯が幅広く利用された状況など、古代食を再現してきた専門家だけに豊かな食材が頭に浮かぶ筆致…あれ、卑弥呼は?実は卑弥呼は1章でしか扱われておらずその辺はタイトル詐欺感満載。それでも、フグを頑張って食べていた縄文人、藤原道長は糖尿病だったらしい…古代食のトリビア本と考えれば楽しめる。特に乳製品周りは意外の塊。パン、肉と並んで食生活の欧米化の象徴みたいな扱いだけど、こんなに食べられていたとは。さて、伝統回帰、しますか?(皮肉)
読了日:1月8日 著者:廣野 卓
日本近代史 (ちくま新書)日本近代史 (ちくま新書)感想
主に政治家同士のやり取りを元に構成した、尊王攘夷運動から二・二六事件までの歴史。新書とは思えない厚さと濃さ。多分言いたかったことは、教科書でスローガン的に語られる様々な言葉、例えば富国強兵や大正デモクラシーが、その時代の「誰」によって形成されたか。また、複数のスローガン同士の優先順位等がどのように付けられたかをちゃんと見ようということ。西郷の高評価や原敬幻想を打ち砕くなどもそのあたりから来てるのでは。37年で切るのは「そこからは崩壊へ一直線」ということなんだろうけど、その辺はやっぱり書いてほしかったかな。
読了日:1月10日 著者:坂野 潤治
21世紀の知を読みとく ノーベル賞の科学 【生理学医学賞編】21世紀の知を読みとく ノーベル賞の科学 【生理学医学賞編】感想
昨年は山中教授が受賞して話題になったけど、比較的日本人が少ないのがこの賞。印象に残ったのは、プリオンのプルシナー、遺伝子技術のカペッキ、実は内容を初めて知ったレベルの利根川進の3人。でも一番はマクリントック女史。読んでいて、乗り越えたハードルが最も高かった人と感じた。ワトソンクリックのDNA発見の直後に、それを一部修正しないといけない議論を出すのは本当に大変だったろう。テストに集中しすぎて名前を忘れたエピソードも微笑ましい。全体として最先端の生命科学は高校理科だと「化学」に近いなぁと改めて思う。
読了日:1月12日 著者:矢沢サイエンスオフィス
アメリカは日本経済の復活を知っているアメリカは日本経済の復活を知っている感想
安倍政権のブレーンであり、日本が世界に誇る経済学者である著者。所謂「リフレ派」の主張がそのまま書かれていると思えばよい。ただこの本は経済学ではなく社会学の本らしい。リフレ派、日銀批判派の問題点として私が日ごろ感じていたのは、「日銀理論とその取り巻き学者」が形成されるプロセスが何だかよく分からないこと、であった。そのあたりが詳しく説明されているのは大変興味深い。経済学の考え方だと例えば中央銀行は「損失関数の最小化」みたいに動くんだけど、現実には組織の論理とかそういうものでも動く(むしろそっち)ということ。
読了日:1月13日 著者:浜田 宏一
科学は大災害を予測できるか (文春文庫)科学は大災害を予測できるか (文春文庫)感想
地震や火山を始めとする災害の「予測」がどこまで進んでいるか。ある程度の長期的な予測は様々な分野で行われているが、やはり短期的には難しい。長期が予想できるなら自由度を下げた状態で短期モデルを作れば予想できそうだけど、そういうものでもないのかな。バブル崩壊が取り上げられていたのは新鮮。とりあえず、ある数学者は経済学を科学として認めたということである笑。印象に残ったトピックは小惑星の破壊方法。核で壊すのは意外と難しい+危険なのか。あとパンデミックの研究でお金を使うのは斬新な発想。他の分野でも使えそうだ。
読了日:1月15日 著者:フロリン ディアク
図解・超高層ビルのしくみ―建設から解体までの全技術 (ブルーバックス)図解・超高層ビルのしくみ―建設から解体までの全技術 (ブルーバックス)感想
表紙の「鹿島編」が異様な存在感を放っているが笑、建設会社自ら高層建築について書いた本。クレーンを次々と造り直して下ろす方法が面白かった。日本は地震大国だから高層建築が遅れている、という話はある意味実に残念。地価や資産課税制度の関係で都心の土地利用が上手く進んでいない面があるという話も聞くが、是非有効活用していただきたいところである。地震対策と言えば真面目にビルを浮かす方法が考えられているのは衝撃であった。地震の被害も軽微になるし、建物の引っ越しもこれでできそうだ。昔首相官邸をクレーンで引っ張ってたけども…
読了日:1月17日 著者:
入門 朱子学と陽明学 (ちくま新書)入門 朱子学と陽明学 (ちくま新書)感想
入門書の入門書と言っているがそれでもけっこう難しい、朱子学陽明学に関する入門書。何やらいきなり宇宙快感?だのといった単語が飛び交ってきて恐ろしい。所々に「近代西洋思想」に対する対抗意識が見え隠れするのは良くも悪くもあり。著者の独文科からアジア思想という異色な経歴もこの辺に関わってくるのだろう。とりあえず読み切った感想としては、学というより宗教。元々「儒教」だから当り前なのだけど、「学」という名前にするから妙な誤解と批判を招くのでは?宗教ですよ~と割り切ってくれればもっとちゃんと評価されるのではないかな。
読了日:1月19日 著者:小倉 紀蔵
モノが語る日本対外交易史 7-16世紀モノが語る日本対外交易史 7-16世紀感想
フランス人がフランス語で日本の交易史を書き、それが英語翻訳されて最終的に日本語になったという経緯を持つ本。思ったより専門書チックで「楽しめる」タイプの本ではなかったが、水銀や唐物など細かいところで発見はあった。中国は理念先行、日本は実益先行型の貿易をやっていたというのは、19世紀の近代化の波に対する反応に通ずるものがある。東アジアを地中海になぞらえていたけれど、地中海と比べたら圧倒的に交易規模は小さいとは思う。でもこの本がフランスでどういう反応を受けたかは気になるな。どんな人が読みたいと思うんだろう?笑。
読了日:1月21日 著者:シャルロッテ・フォン・ヴェアシュア
面白い本 (岩波新書)面白い本 (岩波新書)感想
岩波新書らしいシンプルなタイトルと、岩波新書らしくない著者(失礼)の組み合わせ。岩波新書の読書本というと斎藤孝の『読書力』が有名だが大分路線が違い、読んで楽しい、ワクワクする、といった基準で選ばれている。そこらへんは読書に何を求めるかの違いか。私は成毛路線の方が好きだ。後書きの「この100冊を全部買うと20万円」というのがシンプルで興味深い。専門書に慣れてしまうと1冊2000円は安く見えるから怖い。なお100冊中既読はわずか4冊で、全て鉄板の科学本。いつかはこんなリストがつくれる人になりたいもの。
読了日:1月23日 著者:成毛 眞
日本を変えた昭和史七大事件 (角川oneテーマ21)日本を変えた昭和史七大事件 (角川oneテーマ21)感想
著名な歴史作家による昭和史分析。五・一五事件などでの「テロが実行されるために越える必要があった一線」という見方が興味深い。アルジェリアのテロは何が一線を越えさせたのだろう。東条英機周りはよくある?日本人リーダー(はダメ)論。戦費の話は初めて読んだが、海外と比較しないとわからない。「総力戦」戦争は案外どこも同じな気も。最後にロッキード事件田中角栄論。基本的に擁護調の筆致。なるほど政治家の「カネ」を叩いて失脚させる手法の元祖か。しかし見方によっては日本の低迷は(肯定側の)角栄神話にもあるのではと思う。
読了日:1月26日 著者:保阪 正康
戦争の経済学戦争の経済学感想
イデオロギー面が強調されがちな戦争もお金がかかる、という面に焦点を当てた本。一般書という感じではなく、構成も海外の経済学教科書のスタイル。慣れてない人はちょっと厳しいかもしれない。印象に残ったのはテロ周り。必ずしも貧困とテロが直結するわけではなく、訴えを合法的に届けられるかがカギだという。テロを認めるつもりはないが、「断固としたテロとの戦い」が時に悲惨な結果を生む説明になっているかもしれない。自衛隊を軍隊に?などという声もあるけれど、感情的な対立ではなくこういった議論もできる環境になるとよいね。
読了日:1月27日 著者:ポール・ポースト
ニッポン鉄道遺産―列車に栓抜きがあった頃 (交通新聞社新書)ニッポン鉄道遺産―列車に栓抜きがあった頃 (交通新聞社新書)感想
荷物を運ぶ赤帽、手軽に入れる食堂車…今はない様々な「懐かしい」ものをこれでもかと集めたらできた本。世代的に全く懐かしさのようなものを感じないのだけれど、どうも世代の問題じゃない気がして。「鉄道」をどう捉えて好きになったかの違いが如実に出ていて、描写にあまり共感できなかった。ふれあいの場とか、効率追求批判のような記述があまりに多い。私の中では鉄道はむしろ効率化や機械化の場で、そちらの方にこそ魅力を置いているのでその辺は根本からわかり合えなかった。好きな人は激ハマりするであろう本ではあるけども。
読了日:1月28日 著者:斉木 実,米屋 浩二

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