ご冗談でしょう、むとうさん

自称「この世界ってどうなってるのかな学」をやってるひとが書いてるブログ。一応ベースは経済系。書評チックなものからただの雑感まで、本の話題を中心につれづれなるままに書き散らす予定。最近は思考メモが中心。「記事は全て個人の見解」らしいです。

2012年12月の読書メーターまとめ+

ということで引っ越し最初の記事は旧ブログでもずっとやってた、読書メーターのまとめから。

 

面白いくらい先月と同じで、冊数、ナイス数が全く同じ。ページ数は先月が4498だから14ページしか違わない…ここまで一致するのも恐ろしい。あ、でも『グリーン革命』の上を登録してない(古い方を借りてきてしまったので仕切り直し)から、実質1冊多いのか。

 

今月のベストは『国際秩序』(中公新書)かな。ナショナリズム的な感情に囚われないで今の外交問題をどう解決していくかを考える上で、とても示唆になる本。高校世界史の副読本としても使える。

 

次点で『これが物理学だ!』か『地球の論点』といったところ。『これ物』は新世代の古典物理読み物のスタンダードになるかもしれない。『地球の論点』はちょっと骨太の論考で読むのに骨が折れるけど(骨太だけに)、今地球環境関連に携わっている科学者が何を考えてるかわかる。人を選ぶけど好きな本の典型。

 

ちなみに2012年全体だと、161冊、51116ページ、426ナイス。月平均13.4冊、4260ページ。

 

2012年12月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4484ページ
ナイス数:42ナイス

これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義感想
MITの教養科目としての物理学講義録。体を張った実験までするドタバタ感と絶妙な語り口が良い味を出している。もちろんアメリカの全ての大学でこんな講義がされているわけではないにしても、日本でもこんな講義があったら教養科目不要論とか出ないのにね。最後に美術について語りだすが、なるほど物理学を実験計測と論理からなる「美」だと捉えているのだなと、振り返るとわかる。ひも理論に懐疑的だったのも頷けるけれど、逆にいえば古典物理に傾きすぎな印象も若干。ヒッグス粒子の話をこの教授の口から聞いてみたかったのだけど。
読了日:12月2日 著者:ウォルター ルーウィン
デフレとの闘いデフレとの闘い感想
日銀の2006年のゼロ金利解除の際に副総裁として反対意見を述べ、総裁と副総裁が意見不一致のまま政策が決定されたという有名なエピソードを持つ著者。現在でもデフレをどうするかの議論は続いているわけで、当時の経験から学べることは多いと感じる。デフレ脱出の際長期金利が上がるのにインフレ連動債を使って対応、などのアイディアはあまり聞いたことがなかったので新鮮に読めた。時期的に現・安倍総裁が小泉~安倍時代に政権の中枢にいた頃の話。ということは、当然安倍氏の現在の緩和スタンスに影響しているところがあると考えるの自然だ。
読了日:12月8日 著者:岩田 一政
体験ルポ 国会議員に立候補する (文春新書)体験ルポ 国会議員に立候補する (文春新書)感想
まぁ選挙も近いということで。前参院選に一ジャーナリストが出てみたよという記録。選挙の裏、政党内での権力争いを生々しく描写しているので読み応えがある。よく言われる通り湯水のごとく使われるお金。著者はずいぶんがんばっていたけれど、やはりおいそれと出せる額じゃないね。しがらみがないことをウリにしているみんなの党でも党内の権力闘争は避けられないのだな。あとはよしみちゃんのワンマンっぷりが。ネット選挙解禁は確かに待望だけれど、ネットを使えない状況下で当選した議員が立法するわけだから、結局既得権益との戦いに行き着く…
読了日:12月10日 著者:若林 亜紀
資本主義と自由 (日経BPクラシックス)資本主義と自由 (日経BPクラシックス)感想
経済系古典の中でも屈指の知名度を誇る一冊。細かい差はあるけれど、多分現代の経済学者で全面反対する人はいない…と思う。この本が出たのはまだソ連華やかなりし頃で、様々な「余計な」政府の仕事があったとフリードマンは説く。市場に任せっぱなしが正しいわけでもないけれど、政府にやらせる理由がないことがたくさんある。この違いを理解しないととりあえず規制緩和に反対みたいな思考回路になってしまうわけで。翻って現在の状況を見ると自由主義は嫌われ者サイド。今改めてこの本の問題意識をくみ取り時代に逆行しないようにしたいところだ。
読了日:12月11日 著者:ミルトン・フリードマン
ピカソは本当に偉いのか? (新潮新書)ピカソは本当に偉いのか? (新潮新書)感想
これは地味に面白かった。ピカソがここまで有名になれたのは、結局絵画ビジネスという概念が登場した時代に、前衛絵画という社会に求められた概念を絶妙に取り入れたことにあると。もちろんデッサンの才能などもあるのだけれど、時流に乗れたということ。ピカソに直接関連しない部分も美術論として面白い。まぁ「偉い」という概念に落としこめるのかはよくわからなくて、運と実力と時代を読む力を持っていたという結論なら「凄い」の方がしっくりくるかなーというところ。あと、投機ってのは「わかってなく」ても発生するわけで。
読了日:12月14日 著者:西岡 文彦
思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント (朝日新書)思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント (朝日新書)感想
マスコミでも活躍する経済学者が思考の「型」を提供する、というもの。飯田先生はコメンテーターとして各方面で多彩な話題を扱っている(扱える)人だけど、なるほどこういう「型」に落とし込むからいろんな話題に対応できるわけだ。合理性とか取引、競争の効能みたいなところはよくある経済学に対する勘違いを解きほぐす意味で良い解説。新鮮な話題としてはオープンシステムとクローズシステムの違いというのが面白い。某居酒屋社長が某知事選に出てたけど、あれは典型的な両者の混同ってことなんでしょうかネ。
読了日:12月15日 著者:飯田泰之
イタリア人と日本人、どっちがバカ? (文春新書)イタリア人と日本人、どっちがバカ? (文春新書)感想
うーん。現代イタリアの社会事情を本場イタリア人の目からエピソードを交えて語るというのは面白い。特に南北格差が本当に凄まじく、北イタリア単独だとあんなに強いか…まぁドイツも西だけならもっと強いか。本編?は面白い…んだが。タイトル通り日本論を交えながら「バカ」に言及する部分があまりにもお粗末じゃないか。要するに新自由主義グローバリズムに対抗しないと食い物にされちゃいますよというよくあるオハナシ。空気読め文化と蔓延る個人主義を打破って…じゃあ何を目指すんだ、というのは別にこの人に限ったことじゃないけどね。
読了日:12月17日 著者:ファブリツィオ グラッセッリ
現代エジプトを知るための60章 (エリア・スタディーズ 107)現代エジプトを知るための60章 (エリア・スタディーズ 107)感想
ムバラク退陣からもう2年弱。まだまだあまり先が見えない状況だけど、この本を読むと、いろんな先送りにされがちだった課題が一気に表面化してきて収拾がつかなくなっているという印象がある。例えば公企業の存在感が大きかったり、日常物資の(社会保障政策の一環としての)価格統制が強かったりと、経済面でもある種の独裁だったからこそのシステム。この辺を「民主的」に解決するのには相当な時間がかかりそうだ。あと意外と資源国だったので驚いた。他の産油国組が強すぎて霞んでるのか。そうなると経済的には典型的なオランダ病だよねぇ。
読了日:12月19日 著者:鈴木 恵美
国際秩序 - 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ (中公新書)国際秩序 - 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ (中公新書)感想
これは面白かった。国際関係を構築する上での基礎概念から、それを応用して近現代の国際関係を読みとくまで。例えばウィーン会議は世界史の教科書だと有名な「会議は踊る、されど進まず」といった負の側面が強調されるけれど、これは一つの成功例として紹介されている。高校世界史でなんとなく出てきた事件等の背景が読みとけるのでとても面白い。高校生、受験生にもオススメ。「みんな仲良く」とか「自主路線!」とかいうフレーズでは国際関係は安定しないことがよくわかる。あえて言うなら、もう少し日本の話を増やしてもよかったのではくらいか。
読了日:12月22日 著者:細谷 雄一
政友会と民政党 - 戦前の二大政党制に何を学ぶか (中公新書)政友会と民政党 - 戦前の二大政党制に何を学ぶか (中公新書)感想
日本で過去唯一「二大政党制」と言えた昭和初期の政治を理解することで、現代の政治への示唆を得ようとする本。民政党の設立契機がVS政友会という面を持っていたり、地主資本家対都市労働者という対立があったりとまさに自民党対民主党民政党民主党)。外交政策など各種政策で、いかに自党の成果にするかのために重箱の隅をつつく争いをしたというのもどこかで見たような。また満州事変五・一五事件後の政党の動きはあまり知らなかったので興味深かった。暴走する軍部VS止められない政党、というのは思い込みだったのか、という。
読了日:12月24日 著者:井上 寿一
バブルの歴史―チューリップ恐慌からインターネット投機へバブルの歴史―チューリップ恐慌からインターネット投機へ感想
日本人にとってはバブル=80年代末だけれど、歴史をさかのぼると似たようなことがたくさんありましたという本。歴史は繰り返すというけれど、「今度だけは違う」という言葉でいつも片づけられてきた。投機の肯定が既存の社会秩序を壊そうとする動きに連動すること、そのために女性の投機家が結構活躍していたことが興味深かった。また市場心理だけでなく政策的なもの、日本のバブルであれば政治家が政治資金のために株価上昇をあおる等の裏話も面白く読めた。サブプライム危機の話をこの著者はどう書くだろうか?と考えながら読むと面白いかも。
読了日:12月27日 著者:エドワード チャンセラー
日本語の宿命 なぜ日本人は社会科学を理解できないのか (光文社新書)日本語の宿命 なぜ日本人は社会科学を理解できないのか (光文社新書)感想
社会科学のいろんな訳語のニュアンスのずれを説明した、面白いけどくだらない本(注:断じて逆ではない)。なるほど「社会」と「共同体」みたいに使い分けが難しそうなものから、「首都」と「大文字」と「資本主義」みたいなどこに共通点があるんだってものまで、語源まで遡って共通点、相違点を洗い出していくのは面白い。だけど結局「日本語の」宿命になるかといわれると?結局は「訳語決定は難しいね」で終わってしまうのが何とも。何か諦念みたいなのが感じられるのも悪印象。社会科学用語語源辞典、と割り切って読むならそれなりに楽しめる。
読了日:12月28日 著者:薬師院 仁志
地球の論点 ―― 現実的な環境主義者のマニフェスト地球の論点 ―― 現実的な環境主義者のマニフェスト感想
2012年の締めに。副題の通りで、所謂単細胞的な(と私は呼んでいる)環境保護論とは一線を画す。いや、アメリカではこの路線が主流なのかな?日本で環境保護論というと基本的には「自然に帰れ」論だと思う。でも著者は遺伝子組み換えから都市化まで推奨していく。科学の力を信じているからできる主張だ。アメリカの場合は宗教的な文脈で環境を語る人が多い、というのはあるのかもしれない(特に、生命倫理・遺伝子系)原発も積極推進の立場だったが、さて福島の事故があった今著者がこの本を書いたらどのような議論になっただろう?
読了日:12月31日 著者:スチュアート ブランド

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